ライフデザインドラッグとしてのピル
経口避妊薬をピルと呼びます。ピルは高い避妊効果が得られるので、望まない妊娠を避けることができます。また可逆性があるので、のむのをやめれば、妊娠が可能になります。
またピルをのむことで、月経周期が一定になり、月経痛が緩和します。月経が始まる日が固定されるようになるので、旅行や買い物、仕事や試験などのスケジュールが立てやすくなり、クオリティオブライフ(QOL)を高めることができます。
ピルは、女性の生活をより快適にする1つの選択肢であり、生活設計をサポートすることができる、いわば「ライフデザインドラッグ」といえます。
世界におけるピルの服用人数
ピルは日本ではようやく1999年9月に発売されましたが、米国では1960年に認可されて以来50年の歴史があり、世界中では約9800万人の女性が使用しています。
世界の女性にピルが支持される理由
これだけピルが多くの女性に使用されているのはなぜでしょうか? その理由は高い避妊効果、可逆性(中止すれば妊娠が可能になる)、女性主体の避妊法、副作用が少ない、性感を損ねないことなどが挙げられています。 ピルは、まさに女性のライフデザインをサポートするという点で、世界の多くの女性に支持されていると言えます。
女性の性周期
女性のからだのリズムをコントロールするのは、脳にある視床下部と下垂体。
下垂体は視床下部から分泌される「ゴナドトロピン放出ホルモン」の刺激を受けて、「卵胞刺激ホルモン」(FSH)と「黄体形成ホルモン」(LH)という2つのホルモンを分泌します。
卵子を包む袋である卵胞が発育し、排卵が起こるのは、この2つのホルモンが卵巣に働きかけるからです。
またFSHとLHは、卵巣から「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と 「黄体ホルモン(プロゲステロン)」という2つのホルモンを分泌させる役目ももっています。
発育する卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)は子宮に働いて、子宮の内側の膜(内膜)を厚くしていきます。
また、排卵の後、残った卵胞はLHの作用により黄体に変化し、 黄体ホルモン(プロゲステロン)も分泌します。
この黄体ホルモンにより、 厚くなった子宮内膜はふわふわのベッドのような状態になり、 受精した卵子が着床しやすくなります。
しかし、妊娠しなかった場合、黄体は退縮してしまうので、エストロゲン、プロゲストロンの分泌が低下し、その結果子宮内膜ははがれ落ち、月経になります。
月経になると視床下部は、エストロゲンやプロゲストロンの「卵巣ホルモンが少なくなった」状態を感知し、再びゴナドトロピン放出ホルモンを分泌しはじめます。
こうして卵巣には卵胞の発育と排卵のリズムが、子宮には内膜の形成と月経のリズムが繰り返されていくのです。